開業医や二世のための自己破産対策、資産防衛について

開業して失敗すると、借金を背負います。しかし、自己破産をすれば、借金は帳消しになります。医師は自己破産をしても働けるため、開業してみて駄目なら自己破産して勤務医に戻ればよいです。

 

そして、自己破産をした場合でも
・iDeco
・ジュニアNISA
・子供への暦年贈与
・小規模企業共済
・会社(法人化)にした資産
は、保持されるため、これらの準備をしていくことを選択肢の一つとして推奨します。

 

 

医師と開業と自己破産

これから開業しようという場合や、親の後を継いで開業医になろう、事業規模を広げていこう、という場合には、資産を守るための事前準備をオススメします。

 

事前準備とは、具体的に言うと、もし開業が失敗して閉院することになってしまった場合にも没収されない資産を作るための準備です。

 

 

開業医となる場合は、連帯保証として個人的な負債を負うことになるため、開業して失敗した場合には莫大な借金が残ります。なぜなら、クリニックの運転資金確保のためには、銀行からの融資が必要で、開業して銀行から資金を調達する場合や、二世としてクリニックを継いで改修工事を行う場合には、連帯保証人として、自分も借金をすることになるからです。

 

 

 

そうなると、借金を返せない状態になると

・これまで貯めてきた貯金
・開業してから個人的に貯めた貯金
・家
・車

などは、差し押さえられてしまいます。

 

 

無一文、または借金状態になってしまいます。

 

 

そうなった状態でも、医師であれば生きていけますが、無一文で立ち上がるよりは余裕をもって立ち上がれた方がよいことは間違いありません。

 

そういう対策のための事前準備について、解説します。

 

 

自己破産について知ろう

事業を行って、融資を引いて開業医になっているのであれば、経営が破たんしてしまっているならば自己破産すれば良いです。粘る必要はありません。

 

開業できるかどうかは、医師の腕とは関係ありません。立地、地域での評判、自身のコミュニケーションスキル、経営能力が開業医の成功するポイントです。しかしこれらは医師の能力とは関係のない部分も多いため、開業して成功するかどうかと医師としての技量は比例しないことがあります。

 

経営がうまくいかない場合にとれる選択肢は2つです。
1.自己破産して閉じる
2.ギリギリまで頑張る
このどちらかになります。

 

ギリギリまで頑張る場合には、週末に20万円くらいで僻地の当直バイトを頑張り、借金を返済する形になります。この場合、借金は徐々に返済できますが、貯金は増えませんし生活は厳しくなります。

 

 

経営が上手くいっていない場合は、クリニックを閉じたほうがよいです。開業したけど失敗したということは、その地域の立地の問題や、その地域での評判が思うように上がらなかったという結果なので、厳しい言い方をすると基本的には改善する見込みはありません

 

 

少なくとも、親親族に借金をするのはやめましょう。下手に親や親族に借金をしても、後で人間関係が悪くなるだけですので、自己破産してすっきりして再スタートしたほうがよいでしょう。

 

 

 

医師は自己破産しても医師

医師は自己破産した後でも、普通に勤務医として再就職できます。

 

デメリットは、クレジットカードをしばらく作れなかったり、ローンを組めないくらいです。

 

資格業の中には、自己破産すると免許もなくなる職種もあることと比べると、はるかに恵まれています。例えば弁護士は自己破産すると職業制限のため働くことができません。

 

我々が知っている業種では、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、宅地建物取引士などは、自己破産すると職業登録することができなくなります(ただし復活の方法もある)

 

 

医師や看護師の場合は、自己破産後に職業制限はないため、再就職できます。

 

田舎の方に行ったり、昔のツテで病院に就職するなど、いくらでも再出発の方法はあります。

 

恵まれている環境ですので、生かさない手はありません。

 

 

自己破産しても守られる資産

 

・iDeco
・ジュニアNISA
・子供への暦年贈与
・小規模企業共済
・会社(法人化)にした資産

 

に関しては、自己破産しても資産は保持されます。

 

参考

 

ideco

なお、iDeCoの資産が60歳以降まで引き出すことができないのは前述のとおりであるが、破産してもとられないということも追記しておきたい。たとえ借金まみれになって自己破産しても、iDeCoの資産は借金のカタに持っていかれるようなことがないのだ。大げさな言い方をすれば合法的な財産隠しが可能な仕組みとなっている。

http://toyokeizai.net/articles/-/154075?page=2

 

 

ジュニアNISA<子供への暦年贈与
ジュニアNISAは、子供の名義で行うNISAです。この場合は、一応子供に贈与したという形で運用しているため、原則的には子供の金銭となり、親が自己破産してもとられることはありません。ただし、80万円×5年という総額のしばりがあります。また、子供が18歳を超えるまでは引き出せないため、資金の自由度が低くなります。また、子供に非課税で贈与できるのは年間110万円なのですが、毎年NISAに使った80万円は、この110万円の中に含まれます。つまりNISAで贈与した場合、残り30万円しか贈与できないと言えます。

 

自己破産後に必要なのは、当座の資金で、住居や子供の教育費が主になります。その時に自由に引き出せないのは困るため、ジュニアNISAは現実的にはあまり良い選択肢ではありません。

 

 

それよりもおすすめなのは、子供への暦年贈与です。
子供へ、その年ごとに贈与する額を決めて、贈与することです。この場合には、贈与したという客観的な証明と、お互いの認識が必要になります。

 

そのため、毎年110万円以下という贈与方法では、後ほど税務署に否認され、後で大量の税金を払うことになる可能性があります。

 

そのため、

 

・本人の名前を直筆で署名した贈与契約書を作成する
・公証役場で確定してもらう
・毎年贈与契約書を作成する
・贈与税を申告する(110万円以上払う)
・毎年の金額を変える

 

という手続きをすることで、きちんとした贈与とみなされます。(確実に行うために税理士に相談してください)

 

 

110〜310万円の範囲であれば税率は10%なので、150万円以下の範囲で選ぶ方が4割ほどのようです(国税庁の統計)。

 

この資産は完全に子供のものなので、自己破産しても没収されることはありません。

 

 

小規模企業共済

小規模企業共済は、差し押さえが禁止されています。そのため、小規模企業共済に掛けた掛け金は没収されません。

 

ただし、解約して受け取ってしまった場合は個人資産になるため、資産は没収される可能性はあります。また、事業がない場合(役員でなくなる場合)は加入が継続できなくなるため、「小規模企業共済に入れた事業」の継続性については、考慮する必要があります。開業医であること(医療法人経営者)だけでは小規模企業共済には入れません。
参考:http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/eligibility/index.html

 

 

会社(法人化)にした資産

法人と個人は区別されます。医療法人と連帯保証を取る医師や、開業した医師が自己破産にした場合でも、保有している別会社とは関連しません。

 

参考
https://www.bengo4.com/c_1/c_1036/c_1037/b_502235/

 

そのため、開業とは別に会社運営をしている場合は、その資産は保持されます。ただし、この中で、「会社の資産をどれくらい自分が持っているか」で、持ち分は資産に見なされる可能性は残るため、会社の中での自分の持ち分を減らしておく必要があります。

 

そのため、事前の会社形態は「妻や子供の出資比率の低い合同会社」で、「持ち分を少なく、支配権を十分に発揮できるように」枠組みを作る必要があります。そして、もし実際に自己破産してしまう場合には、会社法429条を使い、会社から出資割合分の資産を差し引きして退職し、一部を返済するという方法を取ります。

 

会社法429条は、「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。つまり、自己破産したので、いったん会社の取締役をやめてもらうよ、という制度を利用し、首にしてもらって会社との関連を外します。

 

そのうえで、子供や妻に、会社の資産を利用して家を借りてもらって、そこに住めばよいです。
⇒参考:勤務医が法人化する(会社設立する)メリット

 

開業医の中には、MS法人という法人形態を利用してこれを行っているひともいますが、開業する前に別で会社を作って置いた方が安心です。できれば開業とは全く関係のない事業を取り組む会社にしておきましょう。というのも、取引銀行が財務諸表を見てMS法人に気が付いてしまう場合には、話がややこしくなるからです。

 

 

※注意点
別会社の運営状況によっても変わります。例えば不動産投資の会社を運営している場合の話をします。この場合では、法人で物件を買うために、個人との連帯保証を取って不動産を購入していることが多いでしょう。そういう場合は、そもそも法人で融資を引いていて、開業で融資を引いていて、というのが問題になります。その場合には、こっそり融資を引いた場合、融資が取り下げられる危険があります。

 

 

 

まとめ

 

医者の場合は、自己破産しても勤務医に戻ればよいだけです。

 

開業医になろうと思ったのは、成功しようと思ったからで、手持ちの資金でやりくりして持ちこたえるようにするためではありません。

 

軍資金は必要ですが、いざという時に差し押さえられない資産を持つことも重要です。

 

小規模企業共済と、子供の預金、別会社の資金は、温存しておいていざという時の生活資金・生活の保険として役立ちます。

 

そういう枠組みを作って資産形成を行い、開業や事業規模拡大をすることをおすすめします。